気候変動への取り組み(TCFD)
TCFD提言への賛同表明
井関グループは、情報開示の基本的な考え方を、「情報を適切に開示し、社会的説明責任を果たす」としています。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※1の提言に賛同し、TCFD 提言に沿った情報を開示してまいります。
※1 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)により設立され、気候変動に関連する財務的影響について、企業等による把握、開示を推奨する提言を公表している。
TCFD報告
ガバナンス
自然からの恩恵を受ける農業は、気候変動と密接な関係にあり、農業機械総合専業メーカーである当社の事業活動にも大きな影響を受ける可能性があることから、気候変動への対応を経営の重要課題のひとつと位置づけ環境経営に取り組んでいます。
気候変動のリスクと機会については「ESG委員会」において統括管理しています。委員会は原則毎月開催し、気候変動のリスクと機会に関しては年4回、検討・審議を行っています。委員会で審議した内容は取締役会へ答申し、重要な事項については、取締役会において審議・決定する仕組みとすることで経営陣の関与強化を図っています。
ESG委員会についてはこちらをご覧ください。
戦略
井関グループは気候変動が事業に与える影響度を認識し、そのリスクと機会を管理し経営判断に織り込むため2021年に気候変動シナリオ分析を試行しました。
外部シナリオを参照した「社会全体が脱炭素に向けて変革を遂げ、温度上昇の抑制に成功する」1.5℃/2℃シナリオ、「経済発展を優先し、世界の温度上昇とその影響が悪化し続ける」4℃シナリオの2つのシナリオから主要事業である農業機械事業の国内外のバリューチェーン全体を対象に分析を行い、2050年時点を想定したリスクと機会を特定しました。データ収集および分析は、総合企画部戦略企画室が中心になり、組織横断(国内営業・海外営業・商品企画・財務・購買・品質・環境関連部署)で実施しました。定性・定量評価等については2030年を想定しています。
*主に参考にした外部シナリオ
1.5℃/2℃:IPCC AR6 SSP1-1.9, SSP1-2.6(産業革命以降の気温上昇が1.5℃/2℃未満に抑えられる気候政策シナリオ)、IEANZEシナリオ、 APSシナリオ
4℃:IPCC AR6 SSP3-7.0, SSP5-8.5(地域対立/化石燃料依存で気候政策を導入しないシナリオ)
リスク・機会の管理
シナリオ分析で特定したリスクと機会は財務影響の大小と可能性の大小の二軸(4象限)で識別・評価し、取り組む時間軸を選定しています。ESG委員会で識別・評価・フォロー体制を構築し、年度ごとに環境変化に伴う戦略の検討・審議、新規リスクの確認を含む見直しを継続しています。短期で事業活動に影響を及ぼすとされるリスクについては「リスクマネジメントワーキンググループ」の管理に統合し、リスク管理規程に基づき業務プロセスの中で発生防止および損失の極小化を図り、業務の円滑化、資産保全などに努めます。気候変動関連の商品・ソリューションの機会については、商品企画や開発テーマ等の方向性を協議する「商品開発戦略会議」「先端技術戦略会議」などの会議体において評価、検討し、重要案件は経営会議や取締役会の承認を経て開発計画に織り込んでいます。
リスクマネジメントについてはコチラをご覧ください。
指標と目標
井関グループは、環境ビジョンとして「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ、2050年までにカーボンニュートラルで持続可能な社会の実現を目指す」を掲げています。
事業活動におけるCO2排出量削減に向けたマイルストーンとして、2022年にグローバル製造拠点における2014年比2030年CO2排出量46%削減を目標と掲げましたが、2023年には目標の対象をグループ全社に広げました。バリューチェーン全体の中で排出量の多いスコープ3の内、カテゴリ1においては全サプライヤーに対し脱炭素への取り組み状況アンケートを通じて自主削減目標の策定を依頼し、サプライヤーと連携した推進をしていきます。排出量の約6割を占めるカテゴリ11においては、農機の電動化の他、環境配慮型商品の拡充を通して気候変動課題の解決や農作業の効率化による環境負荷の低減につながる取り組みを進めています。また、自治体などと連携しスマート農機を活用した環境保全型農業の普及拡大など農産業分野における脱炭素の実証にも参画しており、社会全体のCO2排出量を抑制していくことで持続可能な社会の実現に貢献していきます。
エコ商品や環境負荷低減実績はコチラをご覧ください。
スコープ別排出量
自社におけるCO₂排出量に加え、バリューチェーン全体の排出量の把握に取り組んでいます。今後も算定対象の拡大に務めていきます。
CO₂排出量
区分 | 算出対象 | 排出量[万t-CO2] | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |||||
自社の排出 | 直接排出(スコープ1) | 化石燃料の使用 | 1.29 | 1.20 | 3.33 | 2.98 |
2.84 |
||
間接排出(スコープ2) | 購入した電力・熱の使用 | 2.73 | 2.21 | 3.95 | 3.33 |
2.71 |
|||
上流および 下流での排出 |
その他の 間接排出 (スコープ3) |
カテゴリ | 1 | 購入した製品・サービスの資源採取、製造 | 15.50 | 13.91 | 34.55 | 33.21 | 41.63 |
2 | 購入した設備などの資本財の製造、輸送 | 1.19 | 0.31 | 2.10 | 1.84 | 0.90 | |||
3 | 購入した燃料・エネルギーの資源採取、製造、輸送 | 0.26 | 0.27 | 0.58 | 0.57 | 0.54 | |||
4 | 購入した製品などの輸送 | 0.17 | 0.14 | 1.23 | 2.12 | 4.30 | |||
5 | 拠点から排出した廃棄物の処理 | 0.11 | 0.11 | 0.36 | 0.41 | 0.33 | |||
6 | 従業員の出張 | 0.09 | 0.02 | 0.07 | 0.10 | 0.06 | |||
7 | 従業員の通勤 | 0.13 | 0.10 | 0.41 | 0.42 | 0.39 | |||
8 | 賃借したリース資産の運用 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | |||
9 | 販売した製品の輸送 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | |||
10 | 中間製品の加工 | 未算定 | 未算定 | 未算定 | 未算定 | 未算定 | |||
11 | 販売した製品の使用※1 | 33.79 | 36.19 | 59.37 | 64.16 | 56.27 | |||
12 | 販売した製品の廃棄時の処理※2 | 0.13 | 0.10 | 0.20 | 0.29 | 0.19 | |||
13 | 貸借するリース資産の運用 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | |||
14 | フランチャイズの運用 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | |||
15 | 投資の運用 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | 対象外※3 | |||
合計 スコープ3 | 51.37 | 51.15 | 98.86 | 103.10 | 104.61 | ||||
合計 スコープ1,2,3 | 55.39 | 54.56 | 106.14 | 109.41 | 110.16 |
算定の対象:井関グループ連結対象(海外拠点含む)と井関農機の各事業所
2020年以前の実績の算定対象は国内製造事業所と井関農機の各事業所です。
※1 2019年度より算出精度向上のため増加しています。2021年実績より海外販売商品も含めて算出しています。
該当年に販売した商品の生涯耐久年数使用した仮定に基づき将来の排出量値を含んでいます。
※2 該当年に販売した商品の将来廃棄時の排出量値となります。2021年実績より海外販売商品も含めて算出しています。
※3 事業の形態から対象外となり排出量は0に相当します。
GHGプロトコルにより定義された排出源の範囲
スコープ1:事業者自らによる直接排出(燃料の使用)
スコープ2:エネルギー起源の間接排出(電力や熱などのエネルギー)
スコープ3:その他の間接排出(事業者の活動に関連する他社や客先での排出)