AGRI NEWS [MAFF アプリ連携-農林水産省]

2022年07月05日

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農業DXの事例紹介⑩ 農家と顧客をデジタルでつなぐ新しい流通

農業DXの事例紹介⑩ 農家と顧客をデジタルでつなぐ新しい流通
農業DXの事例紹介⑩ 農家と顧客をデジタルでつなぐ新しい流通
(写真上左:東海青果(株)赤井さんと やさいバス(株)加藤社長)
(写真上右:マックスバリュー東海(株)の木村さん、浅場さん、やさいバス(株)加藤社長)
(写真中:桑高農園の桑高さん)
(写真下:「やさいバス」の仕組みとデジタルツールの画面)


 農林水産省では、農業や食関連産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の具体的なイメージを持っていただけるよう、農業や食関連業界におけるDXの実践事例をご紹介しています。
 第10回目の今回は、デジタルツールを活用した新しい青果流通の仕組み「やさいバス(※)」を活用し、消費者へ新鮮な青果を届ける挑戦をされている方々をご紹介します。静岡中央卸売市場 東海青果(株)の赤井さん、マックスバリュー東海(株)の浅場さん、静岡県の野菜農家 桑高さん、そして「やさいバス」を提供している「やさいバス(株)」の加藤百合子社長にお話しをお聞きしました。

※やさいバス:デジタルを活用し地域で野菜を効率的に流通させる仕組み。webサイト(EC:電子商取引)で、購入者より直接注文を受けた農家は、JA施設や青果店などの最寄りの「バス停」に野菜を持ち込む。持ち込まれた野菜は、やさいバス(株)が提供する地域を巡回する冷蔵トラック(やさいバス)で、当日中に購入者へ配送される。購入者と生産者が直接やり取りするSNS(交流サイト)も提供している。


トップバッターは、東海青果(株)の赤井さんです。

ーこんにちは。本日はどうぞよろしくお願いします。東海青果さんのお仕事と「やさいバス」について教えてください。
 静岡県内の小売業の方々へ、野菜を卸しています。野菜は主に市場で調達していますが、市場外の調達の手段として「やさいバス」の活用を始めました。やさいバスは、地域に青果の集荷場(バス停)をいくつか設け、 その拠点を冷蔵トラックが巡回する流通サービスで、地域の農家の農産物をネットで直接注文することができます。私たちが、事前にネットで注文した品を、農家が指定した時間までに直接バス停に持ちこみ、その日のうちにバス停(市場内)で野菜を受け取れます。静岡県内には4ルートのバスが運行されており、約60か所のバス停があるため、県内各地の野菜を調達できることができます。2日前までに発注すれば配送ルートに乗ります。

―市場での流通も行いながら、農家へ直接注文を行う新しい流通にも取り組んでいらっしゃるのですね。活用のメリットはなんでしょうか?また始められたきっかけも教えてください。
 やさいバスを利用する最大のメリットは、コストです。静岡県内一律350円(税別)という低コストで、新鮮な野菜を遅くとも翌日には小売店の方へ届けています。長年仲卸をしており、静岡の良い野菜を集めているという自負はありましたが、消費者や生産者の視点を持てていないのではないか、という危機感がありました。やさいバスは、注文を通じて農家や消費者と直接につながり彼らの声に接することができる仕組みだと思い、思い切ってはじめました。

―農家や消費者の声を知らなければならないという危機意識から始められたのですね。始めた結果、コスト以外に良いことはありましたか?
 まさに、農家の方々と直接コミュニケーションができ仲良くなれました。個々の農家の方々の良さを直接お聞きすることができ、販売に活かすことができます。また、農家の方々が決めた価格でお客様に提供できていることもよい点だと思います。
想定外に良かった点もあります。事前に注文を行うため、仲卸として安心して取引できるようになりました。市場取引の場合、希望の商品があるかどうか、当日までわからないため、心配でゆっくり眠ってもいられないのです。事前に注文を行うことで安心することができました。朝早くに市場に来る必要がなくなるため、社員の働き方改革にもつながるかもしれません。

―今後の展望はありますか?
 やさいバスの取り組みを機に、市場そのもののデジタル化についても考えています。市場は人海戦術で成り立っている面がありますが、デジタルを活用して共通の作業をデジタル化し効率化できないかということを考えるようになりました。農家、顧客双方に良い流通の仕組みを実現したいです。

―どうもありがとうございました。事前に直接注文ができることで、低コストで、農家の方の顔が見えより良い商品を流通させることができたのですね。まさに、農家、仲卸、顧客 WINWINWINの仕組みといえそうです。


次にマックスバリュー東海(株)の浅場さんにお話しを伺いました。

―本日はどうぞよろしくお願いします。マックスバリューでは、どのようにやさいバスを活用されていますか?
 中小ロットやこだわり野菜をやさいバスで調達し、専用のコーナーで販売しています。お客様の「地のもの」への需要が強く、県内の新鮮な野菜を提供してくれる「やさいバス」を、この2月より使い始めました。

―利用し始めたばかりということですが、メリットはありましたか?
 青果は鮮度が命です。新鮮なもの、旬のものをお客様にお届けしたい。そういう意味で、やさいバスは、新鮮なものをお客様にお届けすることができています。実は、やさいバスのコーナーのほかに地元野菜コーナーもあります。こちらは、近隣の農家が直接持ち込むため新鮮ですが、品ぞろえも農家のお任せです。一方、やさいバスは、こちらが欲しいものを注文することができます。地元コーナーに比べ、静岡県内という少し広い地域の農家が対象なので商品の選択肢が増え、私どもが選んだ「こだわりの品」を新鮮な状態でお客様にお届けすることができるのです。

―今後の思いも教えてください。
 今は、週に3日運んでいただいているのですが、毎日届けられるとよいと思っています。また、webサイトで、農家の「これがおいしいよ、旬だよ」という情報と、私たちの「これが欲しい」という情報のマッチングがより進むとよいと考えています。農家の顔が見えて、鮮度のある商品が次の日に届くというサービスはほかにはなく、このサービスを活用し、面白い、こだわりの野菜を消費者へ届けたいです。

―どうもありがとうございました。消費者の方々へ新鮮で面白い野菜を届ける選択肢が増えたのですね。消費者の方々の笑顔が目に浮かびました!


次に、静岡の野菜農家 桑高さんです。

―本日はどうぞよろしくお願いいたします。桑高農園さんのご紹介をお願いします。
 父母と私の3名で家族経営の農家を営んでいます。市場では手に入りにくいこだわりの野菜など、年間を通じて約60種類の野菜を栽培しています。レストランなど飲食店向けの販売に力を入れています。15,6年前に、海外で料理修行し帰国したシェフからリクエストを受け新しい野菜を作り始めました。その後もリクエストに応え様々な野菜作りに挑戦しています。

―やさいバスはどのように活用されていますか?また利用し始めたきっかけはなんでしたか?
 やさいバスでは、主に飲食店からの注文が入るため、注文の入った野菜をバス停に持っていきます。家の目の前にバス停があるため大変便利ですし、その日のうちにお客様に届けることができます。以前は、お客様に私たちの作る野菜の良さを伝えることに苦労していました。飲食店の口コミのみでの広がりでしたので、販路の拡大には限界があったのです。そんな折に、やさいバスでwebサイトを立ち上げるという話があり、webで野菜の良さ発信していくことができるなら、ということで始めました。

―webサイトで広くお客様に商品を知ってもらいたい、という想いからのスタートだったのですね。使ってみてよいことはありましたか?また、経営的な効果はありましたか?
 これまで関わりがなかった方々とのつながりができました。また、やさいバスは、私たちの商品本来の「価値」を販売できるサービスであることがわかりました。通常の市場流通では、農家で価格を決めることができませんが、やさいバスの仕組みでは、私たち農業者が価格を提示します。本当に良い野菜を、適切な価格で早く消費者のものとへ届けることができています。また、想定外の効果という点では、紙の伝票を処理する手間がいらなくなりました。やさいバスでは、受発注の記録が流通の過程で自動的に残るため、伝票を書いたり、集計したりする必要がないのです。これはとても大きなメリットでした。

―デジタルだからこそ、これまでつながれなかった人(顧客)とつながれたのですね。今後の展望がありましたらお聞かせください。
 いつでもおいしい野菜がある「楽しい農園」にしたいと考えています。農場に足を運んでもらい、採りたての野菜の味も感じてもらいたい。そのためにも、デジタルを活用し、一番おいしいタイミングを消費者に伝える機会を増やしていきたいと思っています。

―どうもありがとうございました。新しい流通サービスを活用しながら、顧客に商品の価値を伝え販売する、また記録などの人的コストを減らすという経営の根幹の変革をされたように思いました。
 

最後にやさいバスの加藤社長に今後のサービスの展望をお聞きしました。

ー加藤さん、よろしくお願いします。
 やさいバスは、モノを運んでいますが、「情報の卸し」だと思っています。取引を通じ、農家、消費者双方の情報が入ってくることが強みなのです。今後はこれらの情報を整理、分析し、農家や小売り業者の方へフィードバックできる仕組みを作りたいと考えています。情報が蓄積されれば、「今年は不作で供給量が減りそう」、「豊作そう」というような情報を事前に発信できると思っています。事前に情報があると対処ができます。農家、地域、顧客に皆に役に立つ情報の発信基地になりたいと思っています。
 DXでは、まずやってみようの姿勢が大切だと感じています。やさいバスも、まずやってみよう、という方々と共に成長してきました。今後も理想の流通を目指します!

―デジタルを活用すると、思ってもみなかったような効果の連鎖がおきてくるのですね。素晴らしいお話をどうもありがとうございました!

(以上)

情報元: 農林水産省

この記事は、農林水産省政策情報API を利用して取得した情報をもとに作成していますが
サービスの内容は農林水産省によって保証されたものではありません。

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