AGRI NEWS [MAFF アプリ連携-農林水産省]

2020年10月07日

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【INACOME】農業で目指す持続可能な地域づくり(㈱ローカルフラッグ・濱田祐太さん)

【INACOME】農業で目指す持続可能な地域づくり(㈱ローカルフラッグ・濱田祐太さん)
【INACOME】農業で目指す持続可能な地域づくり(㈱ローカルフラッグ・濱田祐太さん)
【INACOME】農業で目指す持続可能な地域づくり(㈱ローカルフラッグ・濱田祐太さん)
農山漁村の活性化に向けて、地域起業者の交流を促すプラットフォームINACOME(イナカム)。
MAFFアプリでは、ビジネスモデルからは把握しづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。

今回は、本年2月のINACOMEビジネスコンテストにおいて、「飲めば飲むほど海がキレイになるビール」をプレゼンした㈱ローカルフラッグの濱田祐太さんにお話を伺いました。


■稼げる事業で地域課題を解決する

--「飲めば飲むほど海がキレイになるビール」というユニークなタイトルには、どういった意味が込められているのでしょうか?

私が事業に取り組む京都府与謝野町には、日本海の宮津湾から天橋立によって仕切られた阿蘇海という内海があります。この阿蘇海は「金樽イワシ(マイワシ)」の産地として知られており、地域住民にとって大切な地域資源ですが、高度経済成長期以降の富栄養化により牡蠣が大量繁殖しています。その結果、廃棄する牡蠣殻が地域内で大量に発生し、景観悪化や悪臭などの社会問題を引き起こしています。
また、与謝野町は6年前から小規模醸造所(マイクロブルワリー)向けのホップの栽培に取り組み、年々、収穫量を伸ばしてきましたが、町内に醸造所を開設することが課題になっていました。
これらの地域の課題と資源を掛け合わせ、牡蠣殻を濾過材として活用し、与謝野町産ホップの「六次化」と「牡蠣殻問題」に同時に取り組むビジネスにチャレンジしています。


--醸造所を整備するには大きな投資が必要ですが、ビジネスの目標と現在の立ち位置を教えて下さい。

経営上の目標は、醸造所開業5年後の年間製造量約30万本です。これは、ホップ約500kg、牡蠣殻約10トンを使用し、売上1.5億円に相当する量になります。
ただ、私たちが実現したいことは、単に“ビール屋”になることではありません。ビールを通じて稼げる事業を生み出すことで、魅力的な雇用と地域課題解決を実現させ、その上で、地域への再投資を行うまちづくりを行うことが本当の目標です。
今は、2023年春の醸造所オープン に向けて試行錯誤している段階で、他県の醸造所の協力を得ながら試験販売を開始ました。今後の製品開発の参考としたく、感想をいただければ幸いです。



■きっかけ は他人事に対する「怒り」

--取組を始めるにはどんなきっかけがあったのでしょうか?

大学4年生の時に今の会社を設立したのですが、それには高校生の時に参加した地域ボランティア活動の経験が強く影響しています。
当時は、移住してきた若手住民が危機感を持って様々な仕掛けを展開しようとしていたのに対して、地域の高齢者は「この地域はどうせ廃れる」「行政が悪いんじゃ…」という感じでした。
この後ろ向きな姿勢を見た時に、「自分の地域なのに、なぜ他人事なのだろうか」という疑問とともに、怒りのような気持ちがこみ上げてきて、自ら取り組む姿勢を見せることでこの状況を打破したいと思ったのがきっかけです。


--徐々に自身の価値観に沿った生き方を選択する方が増えていますが、それでも学生で会社設立は少数派だと思います。そこに迷いはなかったのですか?

不安はとてもありました。なので、当初は周りと同じように就職活動をしながら、色々な選択肢を考えていました。その中で会社設立を決断した理由は3つあります。
一つ目は「他者からのアドバイス」。就活の面接でまちづくりへの想いを伝えた時に“自分でやってみなよ”と言われることが多く、振り返って考えることができました。
二つ目は「自分の人生の捉え方」。私が就活した2年前は、新卒一括採用の概念が崩れ始めていて、新卒から就職という流れの捉え方が変わり始めた時期でした。そのような価値観の変化も影響し、20代の一番馬力のある時期にやりたいことがあるのであれば、それを一生懸命やることが、今後の人生を豊かにすると考えるようになりました。
三つ目は「同世代からの刺激」です。自分と同じように何も持っていないけどチャレンジ精神がある仲間がいたので、不安に負けずに前に進むことができました。


--実際に踏み込んでみたらどうでしたか?

業績的には「予想よりも良かった」ですね。予想ではもう少し細々とやっているイメージを持っていましたが、色んな方から仕事をいただくことも出来ましたし、多くの方から関心を示していただいて人を雇うこともできました。
ただ、会社設立後は覚悟を決めて決断することの連続なので、もちろん難しい部分もあります。「地域の雇用を増やす…」という政策目標をよく見かけますが、人を雇い入れる時は本当に重い責任を負って、大きな決断をしました。
このような難しい局面を乗り越えるために大切にしている感覚は「覚悟があるかどうか」。覚悟を持って実行するから、目上の人に対しても自身の考えを適切に伝えることができるし、その結果応援してくれる人も少しずつ増やすことができると考えています。



■自分達だからこそ出来る農業サポート

--持続的な地域づくりにおいて、農業者とはどのような関係を築いていますか?

農産物を加工する立場として「どれだけ安く調達できるか」という姿勢になりがちですが、私たちはホップ生産者を単なる原料調達の取引相手と見るのではなく、地域を支える重要な仲間と捉えています。
与謝野町のような地域が持続可能性を高めるには農業者の維持・発展が不可欠ですが、高齢化が進み農業者個人で対処できない課題が表面化しています。このような課題に対して、私たちは従来とは違った角度から農業者をサポートすることで、持続可能性を高めることができるのではないかと考えています。
その一環として取り組んでいるのが、ホップレンジャーという援農プロジェクトです。これは地域内外の方がホップレンジャーとして年中いつでも生産現場の手伝いができる仕組みで、私たちは一般の方でも楽しく農業に関われるようにコンテンツの整理やネット環境の整備などに取り組んでいます。その結果、今シーズンは60名ものレンジャーに参加いただき、実働時間250時間もの労働力を提供しました。


--濱田さんのビジョンとミッションを教えてもらえますか?

「この仕事なら与謝野町に帰ってきたい」と思えるような雇用を生み出し続け、持続可能な地域づくりをやっていきたいです。
東京一極集中という言葉がありますが、「地元に帰りたい」「地域で働きたい」という方は相当数います。ただ、地域に面白いと思える仕事がなく、役所か銀行の二択で選べずに実現しないのが現状です。そこにテレワークやフレックスのような柔軟で、時流に乗っている事業があれば、人は集まり、地域に雇用が生まれます。私たちは、この部分に取り組むことで持続可能な地域づくりを実現したいと考えています。


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農山漁村の活性化に向けて、地域資源を活用した起業者を支援するイナカム。濱田さんのように、地域課題を解決するために新たなチャレンジをする方々と結びつけるプラットフォームを運用しておりますので、ご関心のある方は是非アクセスして下さい!

情報元: 農林水産省

この記事は、農林水産省政策情報API を利用して取得した情報をもとに作成していますが
サービスの内容は農林水産省によって保証されたものではありません。

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