直播栽培技術のポイント

直播栽培技術のポイント

Point1. 圃場の均平

直播栽培では、圃場を均平にすることで苗立ちが安定し、除草剤を効果的に使用することができます。

圃場に凹凸があると…

⇒水が溜まった場所や深い場所では種子が土中深く埋没し、酸素不足により出芽が抑制される。

水が溜まった圃場

⇒水面から地表部が出ているところでは除草剤の処理層が形成されず、雑草が発生する。圃場の表面に種子が現れやすく鳥害を受けやすい。

圃場を均平にすることで

・播種深度を一定に保つことができるので、苗立ちが安定する。
・除草剤の処理層を形成することができ、除草剤の効果を高めることができる。

 

均平な圃場

均平な圃場

 

凸凹(デコボコ)な圃場

デコボコな圃場

リンク直播チャレンジ2015 3月27日 均平作業

 

point2. コーティング作業

湛水直播栽培では、苗立ちの安定化や鳥害対策のためにコーティングした種子を播種します。コーティング資材は [カルパー] [鉄] [べんがらモリブデン] の3種類があります。それぞれの特徴については直播栽培技術の比較をご覧ください。

コーティング前の種子準備(浸種・催芽)

コーティング前には、発芽を揃えるために種子の浸種・催芽を行います。コーティングの種類によって浸種温度や日数が異なります。

浸種・催芽の目安
  カルパー べんがら
モリブデン
浸種温度 10〜15℃ 10〜20℃ 10〜15℃
浸種期間 6〜10日
積算100℃
3〜4日
積算60℃
3〜4日
積算60℃
催芽 26〜32℃
鳩胸状態まで

発芽しやすい品種と発芽しにくい品種があり、それぞれに適した浸種温度・日数の調整が必要です。
浸種温度が高かったり浸種日数が長かったりして種子の芽や根が伸びきってしまうと、コーティングや播種の精度が悪くなるので、浸種中の種籾の状態を注意深く観察しましょう。
リンク直播チャレンジ2015 5月12~19日 浸種、催芽

コーティング作業

コーティングマシンを使うことで大量の種子を一気に処理できます。コーティングに必要な資材量は下表の通りです。

 

カルパーコーティング比と分量(kg)  種子5kg(播種面積10a)の例
カルパーコーティング比 1 2 備考
カルパー粉粒剤 5 10  

 

鉄コーティング比と分量(kg)  種子5kg(播種面積10a)の例
鉄コーティング比 0.05 0.1 0.2 0.5 備考
混合 鉄粉 0.25 0.5 1 2.5  
焼石膏 0.025 0.05 0.1 0.25 鉄粉の10%
仕上げ焼石膏または
シリカゲル
0.0125 0.025 0.05 0.125 鉄粉の5%

 

べんがらモリブデンコーティング比と分量(kg)  種子5kg(播種面積10a)の例
コーティング比 0.1 0.3 備考
専用べんモリ資材
使用量
0.5 1.5 ※0.1倍重用と0.3倍重用
資材があります

◎慣れるまでは、資材の投入と加水を少量ずつ繰り返しましょう。

リンク直播チャレンジ2015 5月19日 コーティング

コーティング後の保存

コーティング方法により保管方法や保管期間が異なります。

コーティング後の保存方法
  カルパー べんがら
モリブデン
乾燥 ござに広げて30分程度
“陰干し”する
一週間程度、苗箱などの
風通しの良い容器に
薄く広げる
ござに広げて1日程度
“陰干し”する
保管 冷暗所で4日
保冷庫で7日程度
冷暗所で一年以上 冷暗所で一か月程度
注意点 過剰乾燥は
コーティングの剥離を
起こす
種子の温度は40℃以上に
ならないようにする
乾燥が不十分だとカビが
発生する危険がある

とくに鉄コーティングは酸化熱の発熱により種子が高温にならないように薄く広げましょう。

種子の保管

 

point3. 播種時の圃場状態

湛水直播栽培では代かき後1~2日間、泥を落ち着かせ、ヒタヒタ水もしくは落水状態で播種します。
望ましい圃場状態に仕上げることで、適切な播種深度で播種することができ、苗立ちが安定します。
コーティング資材ごとに最適な圃場の状態が異なります。
田んぼに足を踏み入れて確認してみましょう。

カルパー

足跡がつぶれる
ヒタヒタ水の状態

足跡がしっかり残る

べんがらモリブデン

足跡が若干つぶれる程度
カルパー 鉄 べんがらモリブデン

 

point4. 播種後の水管理

播種後の水管理はコーティングの種類によって異なります。

苗立ちまでの水管理(カルパー)


苗立ちまでの水管理(カルパー)

 

苗立ちまでの水管理(鉄コート)


苗立ちまでの水管理(鉄コート)

 

苗立ちまでの水管理(モリブデン)


苗立ちまでの水管理(モリブデン)

いずれの場合も種子が発芽するタイミングで酸素を送る(落水する)ことが重要です。
入排水に時間がかかる圃場では、額縁に溝を切ることで水管理を速やかに行うことができます。

入排水

 

point5. 除草剤の散布

直播栽培では、落水して稲が出芽するタイミングで雑草の種子も出芽し始めます。
播種後に湛水管理を行う場合は、サンバード粒剤などの初期除草剤を施用することで雑草の発生を遅らせることができます。
1.0~1.5葉期になったら速やかに入水しイノーバDXアップ粒剤などの初中期除草剤を散布しましょう。

1.0〜1.5葉期
1.0〜1.5葉期

雑草の葉齢が進むと除草剤の効果が薄れてしまうので、圃場観察を行い葉齢の把握を心がけましょう。

気象条件などで除草剤散布が遅れてしまい、雑草が繁茂した場合にはクリンチャーバスなどの中期除草剤を施用しましょう。

除草剤の散布

除草剤の施用に際しては、ラベルに書いてある使用条件(湛水・落水期間や降雨の有無など)をよく確認してください。

point6. 茎数管理

湛水直播栽培では播種深度が0~1㎝と浅く、移植のような植え痛みもないため、分げつが旺盛になります。
茎数過剰になると倒伏しやすくなり、整粒歩合や千粒重が低下します。
とくに苗立ち本数が多い場合は過剰分げつになりやすいので、生育観察をしながら目標茎数の9割程度を確保したところで中干しを行いましょう。
中干しを行うことで無効分げつの発生を防ぐことができます。

point7. 収穫

直播の稲は移植と比べて登熟するまでに時間がかかります。
収量・品質確保のためには刈取適期をしっかり見極めましょう(早刈りは禁物)。
穂の8割が熟れ色になっていれば刈取適期です。

収穫