井関農機株式会社

営農・栽培技術

【事例集】密播疎植ユーザの「生の声」をお届け!

「疎植」と「密播」を組み合わせた水稲の低コスト栽培技術「密播疎植」。密播疎植を導入すれば、移植時の面積あたりの使用箱枚数が減り、育苗コストや労力が削減できるのはもちろん、育苗規模を変えずに作付面積の拡大が可能になります。

ここでは実際に密播疎植に取り組まれている方の「生の声」をご紹介します。

密播疎植ユーザの声

苗運びや苗補給の負担が軽くなって喜ばれました。

農事組合法人らんざん営農

埼玉県比企郡嵐山町

代表理事:小林 治光さん

経営内容:水稲55ha(うち飼料用米2ha)、小麦34ha、大豆14ha、野菜0.4ha

密播疎植 実施内容

取り組み面積:3.3ha(コシヒカリ)

植付株数:37株/坪

播種量:乾籾210g/箱

使用箱枚数:平均7.0枚/10a

取り組んでみた感想

これまでも苗箱数は減らす方針でやってきて、栽植密度はほとんど37~42株/坪です。密播は平成29年からです。農協さんのお話を聞いて、これからはそういうやり方が主流になっていくだろうと思い、コシヒカリ3.3haで密播疎植に挑戦しました。【さらに詳しく▽】

播種量は乾籾で210g/箱。今までは薄播きで110g/箱でした。

5月6、7日に播いてそれを5月30、31日に植えました。できればあと2~3日早く植えたかったのですが、水の関係で5月中に植えられる田んぼが限られるんです。育苗が長くなって苗ムレがあるかなと心配しましたが、問題はありませんでした。この地域は田んぼで育苗する苗代方式なので、丈夫な苗ができる傾向があると思います。

使用苗箱数は平均7枚/10a、6枚で済んだ田んぼもありました。

密播をやって良かったと思うのは、とくに苗運びと苗補給です。作業者は高齢者が多いので、負担が軽くなって喜ばれました。

従来は苗箱数18枚/10aで計算して15~16枚で植えていましたから、7枚になるというのは、それだけで大きな改革です。田植え作業はオペレータと助手の2人。田植機は8条植なので、1回の苗補給で30a分を積むことができます。

植付本数は4本くらい。苗が小さいので、オペレータが心配するほど薄く感じます。今年はそこそこ結果が出ているので、これでも大丈夫なんだという認識をオペレータがもってくれればいいですね。

水管理は多少深めでも大丈夫かなという気がしています。苗が小さいからかわいそうだと思って水を少なくすると、雑草が出てしまう。少しでも頭が出ていればいいのかな。そこのところをこれから勉強したいと思います。

苗が小さいので代かきは重要です。1回余計にかくくらいでちょうどいい。このあたりはわりと硬い土なので丁寧にかくことを徹底すれば、後で草取りの手間が少なく済みます。

収量は7~7.5俵/10a。慣行と同程度に穫れました。

来年(平成30年)は10haくらいやろうという意気込みで考えています。


体に負担がかかる露地育苗を減らすことができたメリットは大きいですね。

脇野コンバイン

愛知県愛西市

杉村 栄規さん

経営内容:水稲160ha、小麦35ha、大豆25ha

密播疎植 実施内容

取り組み面積:144ha

植付株数:50株/坪

播種量:催芽籾280~300g/箱

使用箱枚数:平均11~12枚/10a

取り組んでみた感想

ヰセキさんの提案で平成28年に20aほど試験的にやってみて、とても良かったので今年から水稲160haの9割を密播にしました(残りの1割は乾田直播)。一番の狙いは苗づくりの労力軽減です。従来の育苗箱枚数は3万5千枚。今年はこれを2万5千枚に減らすことができました。育苗ハウスは2回転で1万枚。これは例年のままですが、露地育苗が昨年の2万5千枚から1万5千枚になりました。【さらに詳しく▽】

露地育苗は田んぼの中での作業なので、ハウス育苗よりも体に負担がかかります。ここでの労働負荷を軽減できて、人員を田植えや代かきに回せるので、生産効率の面でメリットは大きいですね。

育苗日数は15~20日。気温が上がってくるほど日数は短くなります。

田植機は横送り回数を変えて取り量を少なくするだけで、問題なく植えることができました。

水稲は契約先のオーダーで10品種を栽培しています。今年、すべての品種を密播にした結果、4月に田植えをしたコシヒカリなどの早生品種の結果が良くありませんでした。日照不足でこのエリア全体の早生品種が平均的に悪かったので、密播が原因とは言い切れませんが、徒長気味の苗で生育後期まで茎が細く、それが収量に影響したようです。

早生以外の品種の生育は慣行と変わりません。収量は平年並み、この地域の平均反収と同等でした。

新しい技術は、少しずつテストしながらというのが普通なのかもしれませんが、全部やってみてそこから改善していくというのが僕の考え方です。「ちょっとやる」のは余分なコストもかかります。周りの農家さんから「大丈夫なの?」と心配されましたが、全面的に切り替えたから見えてくることもあります。「早生では厳しいかな」というのもその一つです。

来年は4月に田植えするものは従来の育苗に戻して、密播は80~100haくらいにする計画です。


主食用はすべて密播に切り替えて苗箱は2,000枚少なくなりました。

株式会社 林営農センター

三重県津市

代表取締役 林 秀和さん

経営内容:水稲80ha(主食用60ha、飼料用・加工用20ha)、小麦35ha、キャベツ70a

密播疎植 実施内容

取り組み面積:60ha(主食米用)

植付株数:42株 , 50株/坪

播種量:乾籾220g/箱

使用箱枚数:42株 10枚/10a、50株 12~13枚/10a

     

取り組んでみた感想

密播をやるようになったのは今年からです。作付面積が増えてハウスが足りなくなってきたのと、少しでも省力化につながれば良いかなという思いもありました。三重ヰセキさんの展示会で講演をやっていたのを聴いて、主食用米はすべて密播に切り替えました。ヰセキさんには心配されましたが、うちはもともと厚播き(乾籾180~200g)なので、増やすにしても220gくらいまでなら大丈夫かなという判断です。【さらに詳しく▽】

播種作業は主食用米が3月20日頃から4月20日頃まで。飼料用米が5月20日頃までです。

3月播きは気温が低くて伸びないので、育苗日数は30日でちょうどいいくらい。4月以降の苗は平均25日。30日になると色が変わってきます。基本的に苗の様子は今までと変わりません。

使用箱枚数は42株植で10枚/10a(昨年11~12枚)、50株植で12~13枚(昨年14枚)です。

育苗した苗箱の総数は、昨年9,500枚に対して今年は8,500枚。それでも1,000枚残ったので、2,000枚少なくなりました。

今まで10枚/10aというところを目標にしてきました。42株植を採用した後も、もっと減らせる方策はないかと植付本数を少なくしてみるなどいろいろと模索していました。密播の採用でかなり目標に近づいてきたのかなと思います。

田植機の設定は横送りを28回に変えただけ。標準爪で作業しましたが、欠株も少なく、問題ありませんでした。縦かき取り量を下げ過ぎなかったのが良かったみたいです。

来年も継続して密播でやっていきます。一部で播種量250gを試してみようかと考えています。

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