これまでも苗箱数は減らす方針でやってきて、栽植密度はほとんど37~42株/坪です。
密播は平成29年からです。農協さんのお話を聞いて、これからはそういうやり方が主流になっていくだろうと思い、コシヒカリ3.3haで密播疎植に挑戦しました。
播種量は乾籾で210g。今まで薄まきで110gでした。
5月6、7日に播いてそれを5月30、31日に植えました。できればあと2~3日早く植えたかったのですが、水の関係で5月中に植えられる田んぼが限られるんです。育苗が長くなって苗ムレがあるかなと心配しましたが、問題はありませんでした。この地域は田んぼで育苗する苗代方式なので、丈夫な苗ができる傾向があると思います。
苗箱は平均7枚/10a、6枚で済んだ田んぼもありました。
密播をやって良かったと思うのは、とくに苗運びと苗補給です。作業者は高齢者が多いので、負担が軽くなって喜ばれました。
従来は18枚/10aで計算して15~16枚で植えていましたから、7枚になるというのは、それだけで大きな改革です。田植作業はオペレータと助手の2人。田植機は8条植なので、1回の苗補給で30a分を積むことができます。
植えつけ本数は4本くらい。苗が小さいので、オペレータが心配するほど薄く感じます。今年はそこそこ結果が出ているので、これでも大丈夫なんだとといういう認識をオペレータがもってくれればいいですね。
水管理は多少深めでも大丈夫かなという気がしています。苗が小さいからかわいそうだと思って水を少なくすると、雑草が出てしまう。少しでも頭が出ていればいいのかな。そこのところをこれから勉強したいと思います。
苗が小さいので代かきは重要です。1回余計にかくくらいでちょうどいい。このあたりはわりと硬い土なので丁寧にかくことを徹底すれば、後で草取りの手間が少なく済みます。
収量は7~7.5俵/10a。慣行と同程度に穫れました。
来年(平成30年)は10haくらいやろうという意気込みで考えています。
岐阜県海津市
加藤 和幸さん
ISEKIの田植機で37株植が発売された年に試験して慣行植と変わらなかったので、次の年からハツシモはすべて37株植にしています。 基本的に田植作業は僕一人でやっているので、苗箱は少ないに越したことはない。平成28年にヰセキ東海さんから密播疎植の技術を紹介されて、苗補給か楽になるのならと、昨年今年と試験栽培をしています。
田植え時期は早生のあきたこまちが4月10日移植で、コシヒカリ、あさひの夢ときて、最後がハツシモの5月24日。この中では晩生のハツシモが密播の適性が高いだろうと判断してハツシモで試験栽培を行っています。
播種量は慣行で乾籾200g弱に対して密播は260g。うちの播種機で播ける目一杯の量です。
育苗日数は20日を目安としました。慣行苗と比べて密集しているだけで、とくに問題はありませんでした。
試験区は密播37株植と慣行苗37株植を比較しやすいように50aずつに区切って設定しました。
10aあたりの苗箱数は慣行苗の11枚に対して8枚で済みました。
移植直後は同じ37株植でも密播の田んぼはかなりスカスカ。分けつが始まるまではちょっと頼りないくらいでしたが、分けつが進んでくると見た目では違いがわからなくなりました。収量もほぼ同じでした。
ISEKIの田植機は「密播専用機」ではないのが良いところだと思います。年によっては苗づくりに失敗することもあれば、苗が足りなくなることもあります。植物なので何に影響されるかわかりません。そういうリスクに備える意味でも、取り量を調整すれば密播苗でも慣行苗でも植えられるISEKI田植機には安心感があります。
もう1年試験をやってみて成果が良ければハツシモは7haすべて密播に切り替えようと思っています。
うちの育苗機は一度に入れられる量が300枚。それが2台あって一度の作業では600枚が限度です。ハツシモの7haすべてが密播になると苗箱数は560枚になるので、播種作業が一度で済むようになります。
ハツシモの結果が良ければコシヒカリやあさひの夢でも密播疎植を検討してみたいと思います。
脇野コンバイン
愛知県愛西市
杉村 栄規さん
ヰセキさんの提案で平成28年に20aほど試験的にやってみて、とても良かったので今年から160haの9割を密播にしました(残りの1割は乾田直播)。
一番の狙いは苗づくりの労力軽減です。従来の育苗枚数は3万5千枚。今年はこれを2万5千枚に減らすことができました。育苗ハウスは2回転で1万枚。これは例年のままですが、露地育苗が昨年の2万5千枚から1万5千枚になりました。
露地育苗は田んぼの中での作業なので、ハウス育苗よりも体の負担がかかります。ここでの労働負荷を軽減できて、人員を田植えや代かきに回せるので、生産効率の面でメリットは大きいですね。
育苗日数は15~20日。気温が上がってくるほど日数は短くなります。
田植機は横送り回数を変えて取り量を少なくするだけで、問題なく植えることができました。
水稲は契約先のオーダーで10品種を栽培しています。今年、すべての品種を密播にした結果、4月に田植えをしたコシヒカリなどの早生品種の結果が良くありませんでした。日照不足でこのエリア全体の早生品種が平均的に悪かったので密播が原因とは言い切れませんが、徒長気味の苗で生育後期まで茎が細く、それが収量に影響したようです。
早生以外の品種の生育は慣行と変わりません。収量は平年並み、この地域の平均反収と同等でした。
新しい技術は、少しずつテストしながらというのが普通なのかもしれませんが、全部やってみてそこから改善していくというのが僕の考え方です。「ちょっとやる」のは余分なコストもかかります。周りの農家さんから「大丈夫なの?」と心配されましたが、全面的に切り替えたから見えてくることもあります。「早生では厳しいかな」というのもその一つです。
来年は4月に田植えするものは従来の育苗に戻して、密播は80~100haくらいにする計画です。
株式会社 林営農センター
三重県津市
代表取締役林 秀和さん
密播をやるようになったのは今年からです。作付面積が増えてハウスが足りなくなってきたのと、少しでも省力化につながれば良いかなという思いもありました。
三重ヰセキさんの展示会で講演をやっていたのを聴いて、主食用米はすべて密播に切り替えました。ヰセキさんには心配されましたが、うちはもともと厚播き(乾籾180~200g)なので、増やすにしても220gくらいなら大丈夫かなという判断です。
播種作業は主食用米が3月20日頃から4月20日頃まで。飼料用米が5月20日頃までです。
3月播きは気温が低くて伸びないので、育苗日数は30日でちょうどいいくらい。4月以降の苗は平均25日。30日になると色が変わってきます。基本的に苗の様子は今までと変わりません。
苗箱は42株植で10枚/10a(昨年11~12枚)、50株植で12~13枚(昨年14枚)です。
苗箱の総数は、昨年9,500枚に対して今年は8,500枚。それでも1,000枚残ったので、2,000枚少なくなりました。
今まで10枚/10aというところを目標にしてきました。42株植を採用した後も、もっと減らせる方策はないかと植付け本数を少なくしてみるなどいろいろと模索していました。密播の採用でかなり目標に近づいてきたのかなと思います。
田植機の設定は横送りを28回に変えただけ。標準爪で作業しましたが、欠株も少なく、問題ありませんでした。縦取り量を下げ過ぎなかったのが良かったみたいです。
来年も継続して密播でやっていきます。一部で播種量250gを試してみようかと考えています。