井関農機株式会社

スマート農業

高精度データを活用した農業

近年、農業経営の大規模化に伴い、「高精度データ」を活用する場面が増えてきています。データの活用により、ベテランの生産者が持っている「経験」や「勘」の世界が見える化されつつあります。

農業機械の分野でもデータ活用は重要となっており、「スマート農機」として普及が進んできています。

ここでは「データを活用することによる農業」のメリットについて、ご紹介いたします。

課題解決のツール 高精度位置情報

農業の現場では、依然として人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、省力化、人手の確保、負担の軽減が重要な課題です。高精度データを活用することで、現場で発生する課題を解決し、生産者の高収益化につなげることが期待できます。

データには様々な種類のものがありますが、今回は、特に多く活用されている「高精度位置情報のデータ」を活用した農業についてご紹介いたします。

高精度位置情報とは何か

スマートフォンの地図アプリやカーナビなど、私たちの生活では「位置情報」がよく利用されています。こうした位置情報を提供するために、高精度で位置を計測する測位システムのことを「GNSS:全地球航法衛星システム」といいます。

衛星だけの情報を利用した測位では、条件が良い場合でも誤差が30㎝程度発生します。農業に活用する場合、作業によってはさらに高い精度が必要になることがあります。この場合、地上の基準局から発信される「位置補正情報」を使うことで、誤差を2~3cmまで少なく出来ます(RTK測位)。

位置補正情報 RTK測位

高精度位置情報の活用で期待できるメリット

高精度位置情報のデータを活用した農業機械で、現在急速に普及が進んでいるのが「自動操舵システム」です。自動操舵システムを導入することで、期待出来るメリットをご紹介します。

【メリット① 適期作業が出来る】

自動操舵システムが搭載された農機は、運転者が操作しなくても自動的に動くため、作業時間の短縮が図れます。

特に「ロボット農機」は無人で作業出来るため、同じ時間で、より多くの面積を作業することが可能です。1台をロボットトラクタ、もう1台を有人トラクタにすることで、1枚の圃場につき、運転者1名で2台同時に作業を行うことが出来ます(協調作業)。協調作業により、梅雨の晴れ間に短時間で大豆圃場の耕うん・播種を完了させた事例もあります。

また、降雪地域では、水稲収穫後から雪が降るまでの短い期間に、秋耕を完了させることも期待出来ます。適期に作業を完了させるメリットにもつながります。

ロボットトラクタと有人トラクタでの協調作業

【メリット② 作業の仕上がりが良くなる】

自動操舵システムが搭載された農機では、作業中に運転者がトラクタの作業機や田植機の植付部を確認することに専念出来ます。作業機や植付部の調整が必要になった際、すぐに対応出来ます。

例えば、トラクタでのマルチ張り作業の場合、トラクタが曲がるとマルチフィルムに筋が出て、風が吹いた際に筋の部分からマルチフィルムがめくれる原因となります。自動操舵を使うことで、マルチをきれいに張ることにもつながります。

直進アシストトラクタでのマルチ張り作業

【メリット③ 悪条件下でも作業が出来る】

自動操舵システムを使うと、悪条件下でも、位置情報を活用することで確実に作業を進めることが出来ます。

目視での確認が難しい状況を例にします。水が多い圃場で自動操舵システムが搭載された田植機を使うと、線引きマーカーに頼らず正確な条間で植付が出来ます。また、トラクタ作業で翌日に悪天候が見込まれる際、降雨前の夜間に作業を行う事があります。トラクタの作業灯を使った目視確認だけでは難しい夜間でも、作業を進めることが出来ます。

また、走破性が悪い圃場でも効果的な場面があります。ロボット田植機は人が乗らずに作業を行うため、作業中の田植機重量が軽くなります。田植機は軽いほど沈みにくくなるため、湿田での走破性が良くなります。

ロボット田植機での無人植付

【メリット④ 後工程での作物損傷を防ぐ】

自動操舵システム搭載のトラクタで、畦立て作業や播種作業を行うと、条間が一定に保たれた状態で作物が真っすぐ植わります。

条間が一定なので、作物が大きくなった際の中耕除草作業や収穫作業の際、機械の接触による作物の傷みを防ぐことが出来るため、収量増加やロス削減につながります。

田植えでは、曲がってイネが植わっていると、水田除草機や溝切機にイネが当たり抜けてしまうことがあります。自動操舵システム搭載の田植機を使うと、後工程でイネに与えるダメージを少なくすることが出来ます。

直進アシストトラクタを使った大豆播種作業

高精度位置情報の応用 リモートセンシングによる可変施肥

リモートセンシングとは

リモートセンシングとは「物を触らずに調べる」技術で、農業でもリモートセンシングの導入が進んできています。農業でリモートセンシングの活用が最も進んでいるのは施肥作業です。人工衛星から圃場を撮影することにより、圃場データ(マップデータと呼びます)を取得・分析します。圃場の位置情報と、機械の位置情報を照合することで、生育状況に応じた量の肥料を自動散布する作業に活用されています。取得が出来る圃場のデータは、「地力データ」や「生育データ」等です。

【メリット 地力のバラツキに応じた施肥量調整が簡単に出来る】

人の目では察知するのが難しい、地力のバラツキを客観的に把握出来ます。ベテランの農業者が「経験」や「勘」で判断して決めていた施肥量を、データを基にして判断することが出来ます。作業受託を行う農業者が初めて作業を行う圃場でも、地力の状態が把握できるため、施肥設計が行いやすくなります。

施肥量を調整するために必要な操作を、正確かつ自動的に行ってくれます。手動操作では極めて難しい、地力のバラツキに応じた施肥量調整も簡単に出来ます。

水稲の倒伏防止や、作物の収量アップ、肥料のムダ播き防止によるコスト削減にもつながります。

マップデータ連動機能付トラクタでの施肥作業(ヰセキBFトラクタ+タイショー・グランディ)

高精度位置情報を活用した「スマート農機」

高精度位置情報を活用した「スマート農機」には、主に次のようなものがあります。

①ロボット農機

「ロボットトラクタ」「ロボット田植機」を販売しています。

②直進アシスト機能付き農機

「Operesta」シリーズとして、「直進アシストトラクタ」「直進アシスト田植機」「直進アシストコンバイン」を販売しています。

③自動操舵装置搭載農機

お持ちのトラクタや田植機に、アンテナ、モニター、電動ハンドルを付けて使用します。「自動操舵装置」として販売しています。

④リモートセンシングによる可変施肥農機

「マップデータ連動可変施肥田植機」や、「マップデータ連動機能付きトラクタ」を販売しています。

⑤高精度GNSS位置情報サービス

自動操舵を使いたい月だけ、高精度の位置補正情報(RTK測位)を提供するサービスです。安価な利用が出来ます。

「ISEKI高精度GNSS位置情報サービス」

皆様も、高精度データを活用した農業を体感し、農業の高収益化につなげてみませんか?

おすすめ記事